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  アーナパーナサティ  ディーパンカーラ・サヤレー 
 
瞑想の目的
 私たちが、瞑想をする目的は苦から自由になることです。私たちは何度も何度も再生してきました。この再生は苦です。ですから、瞑想の目的は、苦からの脱出解放にあるということを基本的に理解することが必要です。そして、四聖諦について理解する必要があります。第一は苦についての真理です。苦についての真理を理解するためには五つの集合体(五蘊)について理解する必要があります。心と体(名色)における、生滅、無常、生、無我について理解する必要があります。
 肉体における生滅そして眼耳鼻舌身という肉体(ルーパ)と意(心の過程)において生滅および苦の真理を見ていきます。ゆっくりゆっくり実践して、何が肉体(ルーパ)であり何が心(ナーマ)の現象であるかを見ていきます。

 第二の真理は苦の原因についての真理です。私たちの身体と心における生滅、無常、苦、無我を見ていきますと、過去における行いがカルマ(業)を作っているわけですが、その過去の行いが結果をもたらしている。原因があって結果があるわけです。

過去世を見てみますと、そこに執着があり、―それは、人間の存在、デーヴァ、見解(ディッティ)に対してですが―この執着が原因となって、その結果現在に人間として生まれています。

 ヴィパッサナー瞑想はこの二つの対象について瞑想します。すなわち過去における身体と心の生滅、無常、苦、無我が現在に結果し、現在の執着が未来に結果をもたらすのを見ていきます。ゆっくりゆっくり実践し、洞察の智慧をつけると、第三の真理、苦の消滅の真理を理解し、第四の真理、八正道を実践すれば悟りに至ります。

 ですから私たちは今悟りを求めて瞑想しているわけです。第四の真理に至る道は八つに分かれていてこれを実践して行きます。四聖諦はただこの八正道を実践することによって達成されます。

この八正道は三つのグループに分けることができます。まず戒です。戒においては五戒あるいは八戒を守ります。(戒)
第二は定のグループです。(定)
第三は智慧のグループです(慧)

 ですから瞑想を始める前の段階で五戒、八戒を守ることから始めます。
次に定について。集中力を育てるため40の瞑想法があります。人によりその過去世において求めるものや趣味などに違いがあります。ある人々にはアーナパーナサティ(呼吸の気づき)による瞑想法で容易に実践できますが、他の人々にはそれは難しいものです。それで慈悲の瞑想、四界分別観の瞑想など他の瞑想法があり、まず一つを選びます。40の瞑想法を皆やるのは大変なので、ここではアーナパーナ・サティを選んでやります。アーナパーナ・サティが苦手な人には四界分別観という瞑想法もあります。

アーナパーナ・サティの方法
 アーナパーナ・サティにおいては、意識を鼻先に集中します。そこにおいて息が入ってきて出て行くのを観察します。そして呼吸が身体の中に入ったり出たりするのを追いません。ただ、鼻孔周辺の接触、に集中します。その場合皮膚感覚を見るのではありません。皮膚に焦点を当てると振動だとか感覚が生じます。そうではなく接触、に焦点を当てるのです。振動や感覚、温かい、冷たいという呼吸とは別のところへ行かないようにします。ゆっくりゆっくりと集中していきます。

 ここではあくまでも呼吸に集中するのです。入ったり出たりする勢いを見ます。初めは5分くらい集中できるかもしれません。そして心はどこかへさまよい出すかもしれません。それに気づいたらまた呼吸に引きもどします。いつでも呼吸に気づいているようにします。

 初めのうち心は、必ず外へ飛んでいってしまうものです。ですから、心を制御しなくてはなりません。眠くなったり、痛みが出てきたりして気になったりします。しかしそこに心を持っていかないで、必ず呼吸に戻るようにします。いつでも呼吸を瞑想対象にします。私たちは今、集中力の訓練をしているのです。呼吸が瞑想の中心対象になっています。呼吸以外に注意を向けると、集中力が失われてしまいます。

 とても深い集中力の訓練のためには対象を一つにする必要があります。5分10分と集中していきます。10分、20分呼吸に集中します。たまに心はさまようかもしれません。そんなときでも、たえず呼吸に戻ってくるようにします。心が外へさまようなら、数を数えることもよいでしょう。吸って吐いて、一つ。吸って、吐いて、二つ。と八つまで数え、また一から始めます。

 そしてゆっくりゆっくりと心が静まり静寂になり集中していきます。20分30分も続けられると心と呼吸とが一緒になり呼吸に対して親しくなっていきます。喜び、幸福感が出てきます。すると対象が一層はっきりしていきます。そして呼吸はより穏やかになってきます。体が軽やかになり体の痛みも感じなくなっていきます。そし集中力が高まってきます。

ニミッタの出現
 集中力が出てくると、ある、黄色やその他の色がが見えてきます。継続的に30分も呼吸に集中していると、顔の前に、明るい光が見えてきます。
それはさまざまで、異なった色が見えたりしますが、目を開けて、「これは何だ」と見てはいけません。あくまでも呼吸に集中し続けます。この時点で光の方に注意を向けると、集中力は途切れてしまいます。

質問:好奇心が湧いて、これは何だろうと思って見たくなってしまうのですが。

答:光の方を見ないで、呼吸に集中します。初めのうち光の方を見るとすぐになくなってしまいます。

 呼吸に集中し続けると黄色やオレンジ色が見えてきます。そして、さらに呼吸に集中し続けるとその色は、だんだんと白く変わっていきます。色が白くなっても呼吸に集中し続けて下さい。そうすると白い色がさらに明るさを増し、クリスタルのように透明になってきます。

 そしてこのニミッタ、(相、イメージ)が10分間も安定しているようなら、今度はその光のニミッタの方に集中します。つまり、ニミッタには3段階あります。
1、黄色、オレンジ、その他の色として現れる。
2、色が白くなってくる。
3、さらに輝きを増し、透明になる。

ゆっくりゆっくりとこのニミッタが安定してきたら、集中力を呼吸からニミッタの方に移します。

質問:「見たい見たい」と思って見てしまって、そこでニミッタがなくなってしまいます。どうやって引き伸ばしたらよいでしょうか。

答:それは心が興奮しているからです。静かでなくなっているからです。リラックスして心を静めましょう。

 そしてニミッタに集中して、1時間、2時間、心が外へ飛んでしまうことなく集中していると、身体の感覚がなくなります。ただ、心とニミッタだけになります。それが禅定です。禅定には初禅から四禅までありますが、そこまで到達するには、先生の案内が必要です。急がず、ゆっくりゆっくりとやっていきましょう。

三十二身分
 そして深い禅定を得た後に、戒・定・慧のうちの第三の智慧のセッションがあります。洞察の智慧です。私たちの身体の内側で何が起こっているかについての洞察です。禅定によって得た光のニミッタで体の32の部分を見ていきます。ニミッタを懐中電灯のようにして見ていきます。バクテリア、菌などは普通の目では見えません。顕微鏡を使わないと見えません。しかし私たちは、禅定の力を使って体のいろいろな部分を見ていきます。

 32の身体の部分について見ていくのです。わかりますか。私たちはニミッタを使ってこの身体の部分について一つ一つ見ていきます。するとそれが、単なる器官にすぎないことが分かります。皆さんはそれらの器官について、自分の体を好ましいと思っているでしょうか。体の32の部分を見ていくと、それが大変汚れたものであることが見えてきます。

私たちが自らの体をはっきり見ることができないでいると、体への執着を作り出します。自分だけでなく他の人々の身体についてもです。家族、妻子への執着のもとになります。
 体における32の部分についての真実を見るのが第一の洞察です。骸骨を見るのもその32の部分の中にあります。ニミッタを持って見るとき、他の器官は消えて、身体の中に骸骨だけを見ることができます。

 私たちも、いつの日か、確実に骸骨になってしまうでしょう。私だけでなく、皆が骸骨になります。それでブッダは自らの骸骨を集中して観ることによって、また他人の骸骨を見ることによって、執着をなくすことができると説きました。ですからブッダの時代には多くの比丘がこの骸骨を見ていました。美しい婦人がきても、「おや骸骨が来た」と見ていました。そのようにして私たちも家族に対する執着をなくすことができます。このように身体の部分を集中することによって初禅に至ることができます。

質問:身体を見ることによって初禅に至るのですか。それとも、初禅に至ってから、身体を見るのですか。

答:二つの道があります。禅定を得てから、その光を使って体の部分を見ていく、これが一つ。
もう一つは、禅定に至ってなくても、四界分別観で身体を見ていく。その瞑想で、初禅まで到達することができます。

 白骨観の後には白いカシナの瞑想(白編)があります。その後に四界分別観の瞑想をします。ヴィパッサナーに入って行くときには四界分別観の瞑想から始めます。それは眼耳鼻舌身を使うのですが、ここでは眼からはじめましょう。眼をつぶったときに、ルーパが生滅しているのが見えますか。カラーパと呼ばれる、アトムみたいなとても小さな微粒子が生滅しています。

 今、四界分別観を道具として使います。例えば、レンガを粉々にしてその細かい粒において生滅を観ます。微粒子の中に無常・苦・無我を観ます。私たちが集中して、カラーパ(物質の微粒子)を詳しく観察すると、八つの性質を見ることができます。すなわち、地・水・火・風と色・香り・味・栄養素です。

 眼だけでなく、耳・鼻・舌・身においてルーパ(物質現象)の八つの性質と無常・苦・無我を観て行きます。四聖諦の初めの苦諦です。ナーマ(精神現象)は生滅がはやく、観察するのがとても難しいのですが、ナーマを観察することによって第二の集諦が理解できます。これには時間がかかります。

 少し前のことを思い出すことから始まって、どんどん前へさかのぼり、お母さんのおなかの中にいたときを思い出し、さらに過去の生を思い出します。過去生において女性であった人は女性の身体で、デーヴァであった人はデーヴァの身体であったことを知ります。その体の中に四つの要素、地水火風を見ます。そして心において、いかなる意志をもって生きているかを見ます。これには第四禅定の力が必要です。過去生と今生とのつながりが分かると、因果関係が理解でき、四聖諦の第二の真理、集諦が分かります。

質問:眼を閉じた時に、粒子の模様みたいなものが見えるのですが、それがカラーパでしょうか。

答:それはよく調べないと何とも言えません。過去で波羅蜜を積んでいた人なら、禅定まで行かなくても、カラーパの生滅が見えることがあります。ですからよく調べる必要があります。

まとめますと、最初にアーナパーナ・サティをやって、ニミッタが見えるようになって、集中力が増すようにと、修行を進めて行きます。



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