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 六つの性格タイプと40の瞑想法  ディーパンカーラ・サヤレー 
 
  今日は、集中力の問題についてお話したいと思います。集中力を得るのが簡単な人もいますし、非常に難しい人もいます。私はみなさんの修行の状態が良く分からないので、どうぞインタビューにいらしてください。多くの初心者にとって初日での瞑想上の問題は「眠気」です。昨日、どうやって眠気を乗り越えるかについて、少しお話をしました。一つは目をパチパチさせるということ、もうひとつは耳をグッと引っ張ってみるということです。

 それと、もう一つの大きな問題というのは、心があちらこちらへと彷徨ってしまうことです。どうですか皆さん、そういう問題(心が彷徨ってしまう)は、ありましたか?
「妄想するのをコントロールしよう」と思い、「心をあちらこちら彷徨わせたりしないぞ」と決意しても、やはり心が何処か行ってしまうということが起きます。

 最初、坐って呼吸に集中してるときは、鼻先での呼吸に集中を保ち続けます。「呼吸、呼吸・・・」と、ずっと観るようにします。それでもなかなか呼吸に集中できなくて、心が彷徨ってしまうときには、瞑想の対象を代えてみることもできます。それで仏陀は40種類の瞑想方法を教えてくださいました。

六つの性格タイプ
 なぜ、40もの種類があるかというと、人によって趣味も違うし、性格も違います。その「違い」というのは過去世から来ていることです。それについて仏陀は、人間にしても、デーヴァ(天人)にしても「6つの性格」があると仰っています。

 まず第1の性格は「欲のタイプ」です。このタイプの人は、いつも「欲しい、欲しい」と想います。たとえば兄弟に、お母さんがそれぞれ1個ずつのビスケットを分け与えたとしても、1つでは満足できずに3つ欲しがって、「もっと欲しい、もっと欲しい」と思っているような人です。欲によって動いているタイプの人です。これは人間にしても神々にしても動物にしても持っている、本来的な性格です。

  第2は「怒りのタイプ」です。嫌いなものがあったりすると「これは嫌だ、嫌だ」と怒りをもってしまう。そういうタイプの人たちです。どうですか皆さん、怒りを持っていますか?
それは自然のことです。

3番目は「無知のタイプ」です。
4番目は「信のタイプ」の人です。
5番目は「思考のタイプ」で、あれこれと思いをめぐらす人です。
最後の6番目は「智慧のタイプ」の人です。

 仏陀だけが他人の過去世を観ることができるわけで、私にも、皆さんがどんな過去世を持ていて、どういう性格が主要であるかを見分けることはできません。2~3日見ていて、「この人はこういうタイプだ」と、分かってきます。

 頻繁に眠気が起こったり、心があちらこちらへと彷徨い出てしまう人は「欲のタイプ」の人に多くみられます。次に、瞑想してて怒りが出てくる人は、欲よりも怒りの方が強い「怒りのタイプ」の人です。
 三番目の「無知のタイプ」の人は、いつも眠い人です。瞑想していても「眠い、眠い・・」となってしまいます。よく寝ていないとか、疲れ等があって眠いという場合もあるでしょうが、瞑想を2~3回やった後で眠気が出たら、それに従うのでなく、振り払うようにしなくてはなりません。「この少ない日にちで良い集中を得るには眠りなどで時間を無駄にしている暇はない」と智慧と精進によって自らを奮い立たせるようにします。

4番目の信の強いタイプの人は、瞑想をしていると、ダーナ(布施)をしたことや、ずっと戒律を守ってきたことなどの善い思いが訪れてきます。
5番目の思考のタイプの人は、いろいろなことを考えてみたり、予定を立ててみたり、あるいはいろいろなストーリーを創ってみたり・・・ということをしています。
最後の「智慧のタイプ」の人はいつも注意深く呼吸を観ていて、智慧によって瞑想の対象に焦点を当てている人たちです。

40の瞑想法
 40種類の瞑想がありますが、今、挙げた6つのタイプの人たちにどれが当てはまるるでしょうか。まず40のうち10種類の瞑想は「アスバ瞑想」で、死体について瞑想する方法です。最初、亡くなったばかりの死体を見て瞑想するのが第1段階。その瞑想によって深い集中を得ます。それから数日経つごとに、色が変わってきたり、匂いが出てきたり、いろいろな変化が起こりますが、それを観て瞑想するのが第2の段階です。そんな風にして白骨になるまで10段階あります。非常に易しい瞑想法です。死体を見て、瞑想していくと「恐れ」というものがなくなってきて、非常に幸福な感覚が出てきて、初禅に達することができます。

 それから10種類の「カシナ瞑想」というのがあります。カシナというのは円盤のことなのですが、色については四種類ありまして白と黄色と赤と茶色。次の四つは地・水・火・風の四つのカシナがあります。あと2つは、「空間のカシナ」と最後に「光のカシナ」です。全部で10種類あります。10種類の死体の瞑想と、10種類のカシナの瞑想、これで20になりました。

 次に、十種類の対象について心に念じる「10の随念」という瞑想があります。一つ目は仏陀についての随念です。
2番目はダンマについて。
3番目はサンガについて。
4番目は戒律について。戒を守ることによって幸福になることを瞑想していきます。
5番目は布施についての随念です。布施をすることによって起こる幸福感を随念していきます。そうすることによって集中力が良くなっていきます。

6番目はデーヴァ、天の神々についての随念です。
7番目はニッバーナ、涅槃にについての随念です。
8番目はアーナ・パーナ・サティ(出入息の随念)です。
アーナ・パーナ・サティも随念するタイプの瞑想です。
9番目は食べ物を厭う随念(食厭想)です。
最初、食べ物を見たときには「これは美味しそうだ」と食べ物に対する執着があります。食べているときは幸せですが、食べた後で、体の中に入った食物について観想します。胃の中に心を集中します。実際に見ることは出来ないので、イメージを使います。食べ物が消化され、吐いたりする中身が胃の中にあるのををイメージで観るわけです。食べ物の不浄を観察することにより、食べ物に対する執着をなくす訓練になります。
10番目は死に関する随念で、いつか自分も死ななくてはならないということを観ていきます。 これでさっきの20と足して、30種類の瞑想になりました。

 他の4つは無色界の瞑想です。あと4つは、四梵住(慈・悲・喜・捨の瞑想)もう一つは四界分別観といって地・水・火・風に関する瞑想です。もう一つは三十二の体の部分に関する瞑想(三十二身分観想)です。全部で40の瞑想法になります。

タイプごとの瞑想法
 それでお釈迦さまはどんな風にそれを選んだのでしょうか。欲のタイプの人には10種類の死体に関する瞑想と、「三十二の体の部分に関する瞑想」、合計11の瞑想法がふさわしいでしょう。欲のタイプの人たちは自分に対する執着・欲望や、他人(家族等)に対する執着・欲望を持っていますから、死体の瞑想をすることによって「いずれ自分も死んでこういう死体になってしまうのだ」という瞑想法が適している訳です。

 家族とか自分自身を愛してる、執着している人たちはたとえば死体をみて、死体がどんどん変化して、崩れていく様子をみて、それでも執着を持つでしょうか。ですから将来自分の体にどんなことが起こるかという真実を見るのはそのような理由からです。

 「三十二の体の部分に関する瞑想」ですが、私たちは「体」が綺麗なものだと思っています。ところが体の中身、内臓、三十二の器官などを観た場合、それを美しいと思えるでしょうか?
ですから体に対する強い執着を持っている人は、すべての器官に集中することによって真実を知ることが出来ます。

 欲のタイプの人でアーナパーナサティをやっていても、心がどこかへ飛んでいってしまって、上手くいかないという人たちは「三十二の体の部分を見つめる瞑想」をやって、執着を離れ、それからまたアーナパーナに戻ってくるのが良い、と仏陀は仰っています。

 次は怒りのタイプの人で、瞑想してていつも怒りが出てきたり、どうも満足できない、不満足であるという感覚が出てくる人です。仏陀は4つの色のついたカシナ(円盤)の瞑想が良いだろうと仰っています。それと慈・悲・喜・捨の四つの瞑想です。4つの慈悲喜捨の瞑想というのは、たとえば慈しみの瞑想とか、悲(苦しみに対する共感)の瞑想をやっている時に怒りは出てこないでしょう。怒りをコントロールできるわけです。

 怒りのタイプの人で、他人に対して怒りを持っている人は慈悲の瞑想がやりづらいでしょう。怒りを持っている相手に対する瞑想を一番最初にやってもなかなか慈悲というものは出てこないので、怒りを持っていない人に対しての慈悲から始めるのが良いでしょう。

 欲のタイプの人には10の死体に関する瞑想と、三十二の体の部分に関する瞑想、合計11の瞑想法。怒りのタイプの人に対しては8つ(慈・悲・喜・捨と四つの色のカシナ)の瞑想が良いでしょう。
そして無知のタイプと、思考のタイプの人に対してはアーナパーナ・サティが良いでしょう。
 信のタイプの人には6種類の瞑想法が良いだろうと仰っています。三宝(仏陀、ダンマ、サンガ)に対する随念と、ダーナ(布施)、シーラ(戒)、デーヴァ(天人)への随念。この6つの瞑想法が「信」を持った人と思考タイプにひとに相応しいだろうと仰っています。

 それから智慧のタイプの人です。智慧のタイプの人には4種類の瞑想が向いてると仰っています。まず「四界分別(地・水・火・風)の瞑想」です。それから「涅槃の平安に関する随念」です。次に、ある日私は死ぬことになるだろうという「死への随念」です。智慧のタイプの人はそのように随念することで瞑想が深まっていきます。四番目は食べ物を厭う瞑想です。

共通する瞑想法
6つの性格タイプの人に関して30種類の相応しい瞑想を選びました。それで残りの10種類の瞑想は、誰にでも向いているものです。色のカシナについては、怒りのタイプの人に4つの色のカシナ瞑想が相応しいと言いましたけれども、そうするとまだ6つのカシナ瞑想が残っています。 残っているのは6つのカシナ瞑想と無色界の瞑想(無色界禅)が4つで10になります。

今やっているアーナパーナサティは第四禅定までの瞑想ですが、さらにその上に第五、第六、第七、第八禅定という4つの無色界の瞑想があります。初禅から第四禅定の対象というのは物質界のものですが、その上になってしまうと物質界ではなくて意識の中のもの(空間とか意識そのもの)が対象となる禅定です。
ですから自分自身をよく観察して、どのような性格を持っているか、どんな思いが起こっているかなどを良く観て、40の瞑想でどれが一番相応しいかを選んでみることが大事です。

 もし波羅蜜(過去から積んできた徳)があり、相応しい瞑想法を選べば、禅定に達することが出来ます。うまくいかなかった時に、性格に合った瞑想をやるようにして、心のバランスがとれて、落ち着いて平和になってきたら、またアーナパーナサティへ戻るようにすると良いでしょう。

 今、説明したように瞑想をやってみるのは良いのですが、5分くらいやって、次から次へと頻繁に代えるのは良くありません。10分くらいやってみて、心が落ち着いてバランスがとれてきたら、またアーナパーナに戻ると良いでしょう。

 呼吸に集中して、思考が出てくる時はそれを止めて呼吸に戻ってきますが、それがとても難しい場合、非常に思考が強い場合には、さっき言った自分のタイプの瞑想を選んでしてみると良いでしょう。
 初心者にとっては精進(努力)というのはとても大事ですから、とにかく努力するようにして下さい。 呼吸を観るのが退屈だなんて想わないようにしてください。
みなさんに慈悲の心を送ります。


サードゥ! サードゥ! サードゥ!



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